◆『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』上映情報 ◆
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— 映画『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』 (@banksydoesny_JP) April 22, 2016
正体不明の覆面アーティスト・バンクシーがニューヨークで巻き起こした、路上展示という名の狂乱の一ヶ月に密着したドキュメンタリー映画『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』を観てきました。
バンクシーとは
世界各地でゲリラ的に作品を描くことで知られる、イギリス出身のストリートアーティストです。
名前でピンと来なくても、絵は見たことがあるという人は多いでしょう。
その活動は「芸術テロリスト」と呼ばれるにふさわしく、社会を痛烈に風刺した作品を、街中の壁や路上に次々に描き残していきます。
違法に描かれたこれらの作品は驚くほどの高値で取引され、熱狂的な人気を博しています。
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』は、そんな彼が2013年10月にニューヨークで開催した一ヶ月間の路上展示、その一部始終をまとめたドキュメンタリー映画です。
価値とは? アートとは? 根底から掻き乱される
この映画を観たあと、真っ先に頭に浮かんだ単語が「胸くそ悪い」でした。
映画が良くないとか、バンクシーが気に入らないという意味ではありません。
バンクシーがその大胆な活動を通じてあぶり出す社会現象が、ひたすらに気持ち悪いのです。
バンクシーがどんな意図で活動をしているのか、誰にもわかりません。
彼の作品が強烈なメッセージ性を持っているのは確かですが、実のところ、一体彼は何を思っているのか。
わざと人々を引っ掻き回し、熱狂させ、混乱させるのはなぜか。
確かにこういった部分も気になるところです。
ですが、それを越えて筆者の印象に残ったのが、その活動によって巻き起こる社会現象の方でした。
バンクシーの作品に群がり写真を撮る通行人たち。
彼の活動に反対して作品をめちゃくちゃに壊す人々。
金になると知るや否や作品を覆い隠し、見物料を取り始める人々。
本人に無断で作品を切り出し、オークションに出品する美術商。
それを目の飛び出るような金額で買い取る好事家たち。
違法なグラフィティ作品はアートに値しないと切り捨てる人々。
何が胸くそ悪いって、これらがすべて善とも悪とも言い切れないこと。
ただひとつ確かなのが、どろどろと渦巻く人間の欲望だけということ。
価値とは?
アートとは?
所有とは?
本質とは?
自問せずにはいられません。
……そして、映画を見終わってからしばらくして気付いたのです。
私自身、お金を払ってこの映画を観て、胸くそ悪い社会現象の当事者になっているじゃないかと。
強烈な問いかけの嵐、あなたはどう考える?
そんなわけで『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』、考えさせられる映画でした。
バンクシーのことを知りたい方。
価値について、アートについて、根底から問い直してみたい方。
皮肉と狂乱の無法地帯を目撃したい方。
ぜひ劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。